輪地焼き1 - 野焼きのための大切なステップ –
都会で暮らす人たちも、一度は「野焼き」を耳にしたことがあると思いますが、「輪地焼き」という言葉を知っている人は少ないのではないでしょうか。それが何なのか、なぜ行わなければいけないのか、実際にどのようにして行っているのかを2話に分けて紹介します。
野焼きには昔から行われている土地の維持管理を目的とした山野の野焼きと、作物を収穫した後の土壌管理や病害虫の駆除のために行われる野焼きがあります。
どちらも重要な作業ですが、今回は山野の野焼きを行う上で必要ながらあまり知られていない輪地焼きについて、そして野焼きまでの一連の流れについて説明をしていきます。
山野の野焼きの流れ
1.輪地切り
輪地切り、輪地焼きは、春先に行われる野焼きに備えて寒い季節が来る前に行う作業。
山や草原を燃やしている光景はニュースなどで目にした事がある人も多いと思いますが、何の準備もせずに火をつけて、勘と経験だけで行っているものではないのです。自然の中には絶対に燃やしてはいけない場所があります。希少野生動植物の保護のため、また、重大な事故を防止するために、輪地(防火帯)を作ることは重要な作業です。
野焼きに備えて、草原と森林(燃やしてはいけない場所を含む)の境にある草を刈る作業を輪地切りと言います。
2.輪地焼き
今回取材したのが輪地焼きの作業です。
輪地切りから2週間以上間を空けて、さらに2日間雨が降っていない、刈った草が乾燥している時に行います。この時期にしっかり焼けば、春先の野焼き時期まで草花が生えそろわないため、森林や燃やしてはいけない場所との間隔が空き、火をつけても延焼せずに安全な野焼きを行うことができます。
3.野焼き
草原は、いつまでも草原であり続ける訳ではありません。人間の手が入らなければ、小動物や鳥が木の種子を運んで来て、時間をかけて森へと変貌してしまいます。草原は昔、家畜のえさ場としての役割がありました。また、人間の家の屋根にするなどの用途のため、野焼きや採草を行っていました。現代の利便性の向上、生活スタイルの変化は、草原から人や動物を遠ざけ、それまでの自然を変えていっています。森も自然なのだからいいのではないかという考え方もありますが、森に侵食されればそこにあった草花はなくなり、それに付随するように、動物や昆虫の種も変わるなど、生態系そのものが変化してしまいます。
野焼きで土地を維持管理することは、変わらない自然を守ることなのです。
以上の基礎知識を備えて、
2024年9月末に行われた輪地焼きに参加してきました。