輪地焼き2 - 輪地焼きの裏側とそこに関わる人たち –
2024年9月下旬。輪地焼きの日を迎えた。
輪地焼きでしっかりと防火帯を作らないと安全な野焼きができないため、自然に従って行動するしかない。
2度の順延に加えて平日での開催になったため、当日の参加者は9名。
ボランティアスタッフ、ふるさと自然学校スタッフは消火という分業で作業を行うことになった。
火を扱う作業なので、事前に消防署に連絡を入れて、
ここからは当日の流れに沿って説明。
1.消火用の水の充填
リュックサック型の消火水のうに水をたっぷり充填。持ってみると、これが重い…。液体なので重心が安定しないため、思っている以上に重く感じる。火を消すという責任感もあり、かなり疲れそう。
2.打ち合わせ
人数が少ないことも踏まえ、効率的で安全な作業を行うために入念な打ち合わせ。
3.準備運動
いざという時に一番自分を守れるのは自分。ちゃんと体が動かせるように準備運動。
4.輪地焼き
準備が整ったら輪地焼き開始。
着火班、消火班、二手に分かれて事前に輪地切りで切った枯草に次々と点火していく。
まっすぐに火を点けるところは火の動きを見ておけばそれほど大変ではなさそうだったが、
牧場と森に面した複雑な地形の場所で着火の凄さに気付く。
強風の日はそもそも輪地焼きを行わないのだが、遮るものが少ない草原には常に少しばかりは風が吹いている。しかも風向が変わりやすく、森との距離もかなり近い。
丈が高い草を切ったあとのようで、枯草の量もすごく多い。
プレッシャーがかかるだろうなと思いながら見ていると、野焼き実行委員会のベテランが風を読み、周辺を下見し、着火していく。風の向きが定まってきたらまずは風下の森に面した場所から、そこにちょっとした防火帯を作り、そこから風上に向けて火を点けていく。
茶色い枯草は黒色や灰色にその色を変え、大きな防火帯が完成した。
知識、経験の成せる業なのだろうが、さらっとやってのける姿が恰好良かった。
思えば、昔は町中にいても焼却炉があったり、焚火をしたりする風景をよく見ていた。
そういえば火との距離も遠くなったなと感じる。
輪地焼きは続く。
次は路肩、そして斜面。
黙々と作業は続く。
消火班もずっと火の行方を確認しながら火災を防ぐ。
チームワークの良さに驚く。
休憩を挟み。
次は広大な草原に。
背丈を超えるほどに伸びた草を見て、あることに気付く。
「あれ? ここは去年野焼きしなかったのかな?」
ふるさと自然学校の人に聞くと、3月に野焼きをして、半年でこんなに伸びたのだとか。
自然のたくましさを知ることで、管理しないと守れないという現実を体感する。
県外ボランティアは福岡と長崎から。
話を聞いてみた。
福岡からの人は、元々セブンイレブン記念財団に勤めていて、今年の春に退職してもなお、自然保護に関わりたいと考えているそうで、野焼きに直接関われることの喜びを感じて、ヘトヘトになりながらも充実できたとのこと。
長崎からの人は、ずっとここのボランティアに参加しているのだとか。自然に対する思い入れが強いようだ。
以前、中津干潟を取材した時に、聞いた話を思い出した。
松ぼっくりや松の枯れ枝が家庭の燃料になっていた時代、松林はきれいに整備されていたが、家から竈(かまど)がなくなることで松が使われなくなり、松林が荒れた。
草原もそうだ。
人のライフスタイルが変わることで自然も変わる。
草原で生きる動植物の生き死にや素晴らしい景観を、人間の都合で変えてしまわないように、野焼きを行っているのだと知った。自然保護は、物理的な開発に関わることだけに限らない話なのだなと感じた。
それぞれ思うことは少しずつ異なると思うが、自然の中に身を投じると、考えるきっかけを作れる。
たまには自然関連のボランティア参加や、自然を感じられる遊びに行ってみてはいかがでしょう? 知らない自然観を与えてくれた輪地焼きに感謝。