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:2023/08/29 :2023/10/31

夏の主役といえば海水浴! 色んな趣味・思考・体質などがあるが、筆者はそう信じてやまない。海のことをもっと知りたくて、いつも間近で見守り続けるライフセーバーを今回は取材させてもらうことにした。

8 月某日、大分市神崎にある田ノ浦ビーチを訪ねた。( 田ノ浦ビーチの情報は本ホームページ oita-osoto.jp/spot/1122/ 参照)
ひとつ思ったことが…「こんなにきれいだったっけ?」。昔は悪かったという意味ではなく、今の田ノ浦ビーチはとても綺麗で魅力的。

ライフセーバーにお話を聞くために管理棟へ。

応対していただいたのは大分県ライフセービング協会理事長の尾田智史さん。
とにかく海が好きな雰囲気がプンプン。
海の話を聞く前に、海好きな子どもがそのまま大きくなったような尾田さんが気になって仕方がないので、先ずは個人的なお話を聞いてみた。
「なんでライフセーバーになったんですか?」の問いに
「海が好きなんですよ」という真っ直ぐ過ぎる答え。


聞くと、ライフセーバーになったのは23 歳の時。

当時大分県内にはまだライフセーバーはおらず、海とマリンスポーツが大好きすぎる尾田さんは周囲の友達が就職していく中、一人、関西まで講習を受けに行きライフセーバーになったのだとか。大分県初、九州で数人しかいなかった仕事での社会人デビューは、先が見えないが希望にあふれるものだった。
田ノ浦ビーチオープン後、ここを活動の拠点にし、ずっと海を見てきた。海とワンセットの尾田さんなので、尾田さんの思うことをそのまま聞けば、海が人に教えてくれることを知れると思い、目標を聞いてみた。

目標は

  1. ライフセービングの年間雇用
  2. 水難事故でネガティブなイメージの払しょく
  3. 非認知能力を高めること
  4. 五感を研ぎ澄ますこと
  5. 子どもたちの体験格差を無くすこと(大人の事情が優先せず、子どもたちが身を守る力を身につける)
  6. ユニバーサルライフセービング/ ノーマライゼーションビーチ
  7. 自然を守り、後世に伝えること

なのだとか。

それぞれ目標について細かく説明をすると、

  1. ライフセービングの年間雇用
    思いを同じくするライフセーバーさんが育っても仕事が夏場中心なので、年間を通じて雇用を確保してあげることができないから、違う仕事に就いてしまう。この状況をなんとかしたい。
  2. 水難事故でネガティブなイメージの払しょく
    毎年残念ながら日本中で海水浴中の水難事故が起こる。都度の対策ではなく、すべての海水浴をする人に根本からの意識改革をしてもらい、海は危険なものだという単純な決めつけをなくしていきたい。
▲田ノ浦は総合的な安全性が評価された「JLA 認定海水浴場( 日本ライフセービング協会選定)」ビーチなの
だそう。九州では宮崎県の青島とここだけ
  1. 非認知能力を高めること
    非認知能力は物事に対する考え方や取り組む姿勢など、日常生活や社会での活動を行う上で重要な影響を及ぼす能力のこと。海の遊びでは生きる力を身に着けることができるものが多いので、それを高めるための活動をしていきたい。
▲ジュニアライフセービングスクールやジュニアライフセービングクラブなどの活動も
  1. 五感を研ぎ澄ますこと
    自然は人の感情・感覚を豊かにする。自然の中に身を投じ、全身の感覚を目覚めさせることの大切さをこれからの子どもたちにも伝えていきたい
  2. 子どもたちの体験格差を無くすこと
    夏=海」となりづらい世の中。親御さんの仕事の都合や解釈で海が避けられることが目立ってきた。「海は危ないから」「日焼けするから」と、避けられることも多くなり、子どものそもそもの体験自体が享受されないことも増えている。どう危ないのか、危ないからどうすればいいのか、きちんと子どもたちに指導しないために、親の目を盗んで海へ行き、遊泳禁止の場所で泳いで悲しい事故も起こっている。これをなんとかしたい。
  3. ユニバーサルライフセービング / ノーマライゼーションビーチ
    海はみんなのもの。大人も子どもも、障がいのある人も、触れる機会がない人にはそのきっかけや手段を作ることも大切にしている。
▲障がいのある人でも海を近くに感じられる秘密兵器。水陸両用の車いすなので、身体的な都合で通常海水
浴が困難な人でも乗ったままで海を楽しめる
  1. 自然を守り、後世に伝えること
    ※別記事「ライフセーバーに聞く~自然を守り、後世に伝える~」にて紹介

せっかく海に来たのに、座って話して帰るだけになりそうなのでそろそろ取材を。

ライフセーバーの写真とともに活動と海でのトラブル回避・対処活動を紹介。

▲三浦来輝さん 高校1年生

写真だけで簡単に紹介することはできないが、話を聞くと、海でおぼれそうになった時に大切なことは“力を入れないこと” らしい。海では力を入れなければ浮くので、気持ちを落ち着かせて力を抜くことが大切なのだとか。ただ、容易ではないため、幼少期から自己防衛能力を身につけるためにウォーターセーフティプログラムを知っておくことが重要とのこと。
※詳しくはe-lifesaving ホームページ

▲山崎雄大さん 高校2年生

水難事故は起こった時の対処は当然大事だが、それが起こらないようにすることの方が重要なのだとか。そこで大切にすることは事が起こらないための声掛け。子どもと来た海水浴で両親がスマホに夢中だったり、日陰に入って目を離したりすると事故に繋がることも。少しでも多くの目を海に注いで、取り返しのつかない悲惨な事故を防ぐため、監視の目は多い方がいいとのこと。

なんかみんな…

かっこいいわ。

 

桟橋にもう一人黄色いT シャツが。

ユニバーサルライフセービング、ノーマライゼーションビーチに取り組む大分県ライフセービング協会のライフセーバー小川弘晟さん。
小児麻痺で全身の自由は他の人よりはやや利きづらいが、海が好きで人が好き。気合と根性で砂浜から人工島まで泳ぐという情熱のカタマリだ。
この人と一緒に働きたいという尾田さんの熱烈なスカウトで一緒に活動している。
業務内容は桟橋から監視活動。活動をする日は常にここで活動。
この日は34℃。「暑くない?」の問いに「暑いです」と素直な返答。

続けて「でも今日は風があって、仕事が楽しいから大丈夫」と。
「あんた、海の男やで!」カッコよさに尊敬します。

大人のため、子どものため、障がいのある人のため。
みんなのために海がある。当たり前のことだけど。

今回の取材を通じて

ライフセーバーの仕事は、水難事故に遭った人を助けることだと勝手に思っていた。
しかし、今回学んだことは、事故に遭ったあとの対処ではなく、事故に遭わない体制を作りつつ、自分で自分を守れる人を育てることの重要さだ。


「海は危ないから…」と、単純に目を逸らし、近付かないという判断をするのは簡単だ。
しかし、それは海から得られる多くの感動や経験、身につけられる力からも目を逸らすという意味も持つ。


海はみんなのものだということも、海がみんなにたくさんのことを教えてくれることも尾田さんはよく知っている。田ノ浦で始めた小さな試みが大きな波になるように、今後も大切に見守っていきたい。


夏の日の取材は忘れられない話が多く聞けました。汗だくになりましたが(笑)


大分の海は楽しいですよ。

一般社団法人大分県ライフセービング協会

ホームページ: http://ola-aloha.net/
メール   : info@ola-aloha.net 

※海にいてほとんど電話には出られないので、ジュニアライフセービングスクールやジュニアライフセービングクラブなど、お問い合わせはメールにて