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:2024/02/13 :2024/02/13

登山には、ルールも勝ち負けもありません。それは、山へ一歩足を踏み入れるだけで誰でも自由に楽しめる登山の魅力の一つです。しかし、無意識のうちに他の登山者に迷惑をかけてしまったり、自然を傷つけたりしてしまうのは避けたいもの。ここでは、知っておくと人も自然も気持ちよく、かつ安全に登れる登山のマナーをご紹介します。

登山口での駐車マナー

登山では、登山口に長時間駐車することが多々あります。路上駐車は、地元の方に迷惑をかけてしまうだけでなく、緊急車両の通行の妨げになる場合もあります。出発前に、登る山の駐車スペースの確認を確実に行いましょう。

山開き当日のくじゅう連山、牧ノ戸峠周辺の路上駐車。
地元車や緊急車両の通行の妨げになるため、路上駐車しないように心がけましょう

気持ち良いあいさつをしよう!

登山道で他の登山者とすれ違う際は、顔を見て気持ち良くあいさつをしましょう。あいさつは、情報交換の機会でもあります。道の状況を聞いたり、花の開花状況を聞いたりと、下山してくる登山者との会話は、これから登る山の情報を得る絶好の機会です。可能であれば積極的に話しかけてみましょう。

すれ違う登山者とは、あいさつとともに積極的に会話をしてみましょう。
そこで得た情報が、もしもの時にお互いの身を守ることになるかもしれません

また、あいさつを交わしたことが遭難捜索の手がかりになる場合もあります。何時頃すれ違ったのか、単独なのか、グループなのか、ウエアやザックの色はどうだったかなど、お互いの情報が捜索に生かされることも。そのためには、相手の顔をしっかり見てあいさつすることが大切です。登山中だけなく、登山口へ向かう途中や駐車場などで出会う地元の人にも、ぜひ積極的にあいさつしてください。

他の登山者とすれ違う時

登山道ですれ違う際、基本は登り優先です。道を譲る時は、足場がしっかりと確保できる安全な場所を選び、できるだけ山側で待機しましょう。谷側で待機していると、すれ違う際に相手がバランスを崩してぶつかってきたり、ザックがぶつかったりして谷へ滑落する可能性もあります。

下山時に道を譲ろうとしても、上りの登山者が疲れていて譲ってくれる場合もあります。互いにコミュニケーションを取りながら臨機応変に動きましょう。

山では基本、登りが優先。道を譲る場合は安全な場所で待機しましょう

大人数のグループで登っている時に、下山して来た登山者から道を譲られた場合、全員が登るまで相手を待たせてしまうことになります。その際は、「人数が多いのでどうぞお先に」と声をかけてみましょう。同様に、後ろからペースの早そうな登山者が近づいて来たら道を譲り、先行する仲間には、「後ろから来られます!」と、後続登山者の存在を伝えましょう。

大人数のグループで登山をする場合は、他の登山者の行動の妨げにならないか、休憩時や山頂でも周囲に注意して行動しましょう

動植物を傷つけない、持ち帰らない

山中で出合う動植物を傷つけたり、持ち帰ったりすることはやめましょう。写真撮影などで登山道を外れると、野草を踏みつけてしまったり、土が踏み固められて登山道が広がってしまったり、土砂崩れを誘発する場合もあります。登山道はむやみに外れないようにしましょう。

登山道中の木道からは外れないようにしましょう。
周囲の植生を保護するために敷かれている場合もあります

もし落石を起こしてしまったら

ガレ場(石がゴロゴロと積み重なっている登山道)を歩く際は、浮石を確認しながら、落石を起こさないように一歩一歩丁寧に慎重に足を運びましょう

登山中に落石を起こしてしまったら、下方に向かって「ラク!(「落石」の意)」と大きな声で伝えましょう。勢いがついて落ちる石は小さくても凶器となり、下にいる人に当たると大変危険です。ガレ場(石がゴロゴロと積み重なっている登山道)を歩く際は、一歩一歩丁寧に足を置いて、落石を起こさないように注意しましょう。

山頂や休憩時に気をつけたいこと

休憩は、他の登山者の通行の邪魔にならない場所で取りましょう

山頂や休憩時は、他の登山者とその場所を共有することになります。安堵感から周囲の状況に気が回らなくなることも。他に人がいる場合は、椅子やテーブルにザックだけを置くのは避けましょう。また、山頂標識は、山頂に到着した人の多くが記念写真を撮るものです。山頂標識の周辺で休憩したり、ザックを置いたりするのは避けましょう。

多くの登山者で賑わう山開き当日の久住山山頂。
狭いスペースを多くの登山者で共有する山頂では、休憩場所など、周囲への気配りを忘れずに
山頂標識前は、誰もが記念撮影をしたい場所。
ザックを置いたり、休憩をしたりしないようにしましょう

ゴミは出さない、残さない

山にゴミを残さないのはもちろんですが、自宅で準備をする段階で、なるべくゴミが出ないように無駄な包装は取り除いておきましょう。登山中に出るゴミを減らすことができ、山にゴミを落としてしまうのも防げます。なるべく個包装のものを避けるのもゴミを減らすコツです。袋を開ける手間が省けるため食べやすく、行動食にも最適です。

ガベッジバッグ。開口部を折りたたんで密閉できるため、匂いも気にならずコンパクトに持ち運べます。
トイレットペーパーやゴミ袋とセットで用意しておくと便利。
アウトドア用のトイレットペーパー入れは、首にかければ両手を使えます。
ガベッジバックは上下にバックルが付いているため、ザックの中に入れたくないゴミを外側にしっかりと装着できます

山のトイレマナー

まず心がけておきたいのは、山に入る前にトイレを済ませておくこと。家を出る前に、登山口までの道中でトイレができる場所を確認しておきましょう。登山口にトイレがあるところでも、冬季は閉鎖されている場合もあります。同様に、登る山のトイレの有無、位置も確認しておきましょう。

山中にあるトイレでは、維持管理に充てられるトイレチップが必要な場合があります。事前に小銭を用意しておきましょう。資源が限られた場所でのトイレの維持管理には膨大なコストがかかり、処理能力にも限りがあります。使用方法などをよく確認し、マナーを守って利用しましょう。

久住分かれのバイオトイレは、冬季(12月頃〜3月頃)は閉鎖されます。
写真は携帯トイレ専用ブース。
通常のトイレではなく、持参した携帯トイレを使うために便座のみが設置されています。
使用後の携帯トイレは必ず持ち帰りましょう

トイレのない山に登る際は、携帯トイレを持参するようにしましょう。ツエルトや折りたたみ傘などがあると、目隠しに使えて便利です。トイレに行くために仲間と離れる際は、必ず声をかけましょう。トイレ遭難の事例も発生しています。戻る場所の目印となるものを決めて、登山道からあまり離れないようにしましょう。

トイレを我慢して歩き続けると、集中力もなくなり歩行にも影響し危険です。やむをえない場合は、我慢せずに山中で用を足しましょう。沢筋や水場からできる限り離れ、なるべく周辺の植生を踏みつけないよう心がけます。穴を掘って分解を早めるため土をかぶせ、使用済みの紙は必ず持ち帰りましょう。ビニール袋、トイレットペーパーなどのトイレセットを準備してザックに入れておくと便利です。

携帯トイレ(ビニール袋、吸水ポリマー、チャック付き防臭袋)。
白いビニール袋の外側を折り返して、便器のような形に広げる。
ビニール袋に用を足し凝固剤をふりかけ、固まったらなるべく空気を抜いてビニール袋の口をしっかりと結び、チャック付きの防臭袋に入れる。
ザックの中に入れたくなければ、先に紹介したガベッジバックなどでザックの外に装着して持ち運ぼう。
携帯トイレは家にも常備しておくと、防災時に役立ちます

【グッドハイカーの心得8か条】

1.挨拶は気持ちよく
2.すれ違う時は基本、登り優先
3.山の動植物は決して採取しない
4.ゴミは持ち帰り、落とさない
5.時間に余裕を持った登山を
6.地図を携帯しよう
7.登山届を出そう
8.トイレは事前に済ませよう