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:2024/02/20 :2024/02/21

せっかく山に登ってリフレッシュしても、自分の登山が自然を壊すことにつながってしまっては意味がありません。登れば登るほど、その景色が失われるようなことは避けたいもの。そこで、自然を傷つけてしまう可能性のある登山中の行為をあげてみました。少しの意識が、自然に優しい登山につながります。

植物に配慮した登山をしよう

●草花の名前を知るだけで、山登りは楽しくなる

まずは、山で出合う草花に興味を持ち、名前を覚えることから始めてみましょう。すると、まるで友達が増えるように山歩きは楽しくなります。写真を撮り、家に帰って調べてみることで、下山後も山の時間は続きます。そして、「また会いにいこう」と、楽しみに待つことができます。あなたの登山における草花の存在感が増し、植物を大切に思う心が自然と芽生えるでしょう。

花に出合ったらまず写真を撮ってみる。
インターネットで検索して調べれば簡単ですが、山野草のガイドブックが1冊あれば、調べたい花以外の種類も目に入り、より多くの種類を覚えることができます。

●植物を採取しない

山に咲いている草花は、そこで見るから美しいものです。決して持ち帰らないようにしましょう。一人くらいならいいだろうという考えで多くの人が採取してしまうと、絶滅に追いやられてしまうケースもあります。草花が山で咲くようすを現地で鑑賞したり、写真を撮ったりして楽しみましょう。

●山では何も持ち帰らない

国立公園や国定公園などは自然公園法により環境が守られています。自然公園法では、木竹の伐採・損傷や鉱物の掘採など、許可・届出なしにしてはいけない行為を定めています。山では、「何も持ち込まない、傷つけない、持ち帰らない」を心がけましょう。

●登山道を外れて歩かない

歩きづらい、ショートカットしたい、写真を撮りたいなどの理由で、登山道を外れて歩くことは避けましょう。多くの人が登山道以外を歩いてしまうと、土が踏み固められ道幅が広がり、植物の生育場所を奪ってしまいます。

木道は希少植物を守るために整備されている場合もあります。花がないからといって足を踏み入れると、土が踏み固められ芽吹きを邪魔することになりかねません

雨が降ったときにだけ池ができるくじゅう連山の雨ヶ池。
ノハナショウブやヤマラッキョウなどの群生が見られますが、その数は年々減少しています。
木道からは外れないようにしましょう。
ラムサール条約に登録されるくじゅうの坊ガツルやタデ原湿原では、春に行われる野焼きによって草原が保たれています。
焼き払われたあとの草原は真っ黒になるため、くじゅうの春は色に例えると“黒”と言われます。
野焼きの後はさまざまな花が芽吹きます。
春はキスミレやサワオグルマ、夏はハンカイソウ、ノハナショウブ、
秋はヒゴタイにシラヒゲソウ、アケボノソウなど、四季折々の花を楽しめます。

登山靴の土を落とさないといけないのはなぜ?

「また山に行く予定があるし、どうせ汚れるから」と、登山靴を洗わないままにしていませんか? 

そんなあなたの汚れた靴によって、自然が失われるかもしれません。原因は靴に付着した外来種の種。外来種とは、人の活動を介して外から侵入してきた生物のことです。登山靴に付いた土によって、外来種の種が本来の生育場所ではない山に運ばれ、生態系に影響を及ぼしてしまうのです。在来種の生育場所を奪ってしまったり、交雑することで雑種が生まれたりと、特に希少植物の多い高山では問題となっています。

下山後は、自然を守る気持ちで靴を洗いましょう。

靴のメンテナンスは、自然を守るだけでなく靴を長持ちさせます。
靴の汚れは、臭いの元になったり撥水効果が失われたりすることに。こまめに洗いましょう。
特定外来生物に指定されているキク科のオオハンゴンソウ。
生命力が強く、種子と地下茎で繁殖し在来植物を脅かす存在です。
九重町の長者原にあるタデ原湿原では、定期的に駆除活動が行われています。

ちょっと待った!SNSにアップするその前に

山で珍しい花に出合うと、誰かに教えてあげたくなるかもしれません。しかし、SNSなどにアップしたりするのは要注意。その情報が、心無い人による希少植物の盗掘につながることもあります。花の写真をインターネット上にあげる場合は、その花が絶滅危惧種ではないかどうかを調べてみましょう。また、花の写真をあげる際は、場所が特定できるような表現は避け、位置情報は削除してからアップしましょう。

野生動物に出合ったら

登山中に野生動物に出合ったら、餌などは絶対にあげないようにしましょう。

イノシシなどは、驚いて突進してくる場合もあります。まずは出合わないことが肝心。鈴やラジオを携帯し、音を出してこちらの存在を動物に知らせてあげましょう。特に、黙々と歩いてしまう単独の場合は注意しましょう。動物からすればわれわれは侵入者です。「お邪魔します」の気持ちを忘れずに山に入りましょう。

動物にこちらの存在を知らせるために、鈴やホイッスルを携帯しましょう。
自然に戻るだろうと思って、果物や野菜の皮を山に捨てるのはやめましょう。
野生動物を餌付けしてしまうことになったり、高山ではバクテリアの活動が活発でないため、分解されずに残ってしまったりすることもあります。