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:2024/03/23 :2024/03/22

アウトドア熱の高まりで、最近では根っからの山好きの人たちだけではなくカジュアルに山と触れ合う人も増えてきた。山は誰のものでもなくみんなのものであるが、みんなが行き続けたい山を守るために、環境意識はもちろん、マナーや意識を高く持って挑まなければならない。

今、問題となっているのが登山時の路上駐車問題。

登山人口の増加から、用意している駐車場の数では物理的に賄えず道路脇に車を停めてそのまま登山に向かう人が増えてしまっているのもその要因のひとつだ。

そこで環境省や大分県が、令和4年度から何度か試験運行しているのが「くじゅうラウンドバス」。

年に数回試験運行されているこのサービスはくじゅう連山の主な登山口を繋ぐバスで、たくさんの駐車場を抱える「長者原登山口」、「瀬の本登山口」を拠点に「牧ノ戸峠登山口」、「赤川登山口」、「南登山口」を繋ぐ周遊バス。

せっかくなので体験してみることに。

ん? ていうことは、山を登るということ…? 予期せぬ登山に慌てて準備。

登山は小学生以来なので、登れるかなという不安を抱えて当日の朝を迎える。

長者原登山口に集合し、バスに乗り込む。

取材日は11月3日、紅葉のピークは過ぎていたが、朝7時の時点で車がたくさん。

紅葉がピークの時期は、日中になればご覧のとおり。駐車スペースではないところに車がたくさん。

ラウンドバス利用者専用の駐車場もあるので、おすすめだ。

登山スタッフの中にはスタッフのお子さんがおり、バスの中にはお年を召した方も多数。

元々体力に自信のある筆者は少し安心。

バスに揺られて数分で。

牧ノ戸登山口に到着。

同行の山登り好きたちはバスを降りるなりすぐに準備運動開始。

そして、さっさと山へ向かう(心の準備が…)。

登山届は忘れずに。

早速心を砕かれる坂が登場。

たったの200mほどで、日常生活では使わない筋肉たちが悲鳴を上げる。

休憩所到着。なかなかの景色。

上から見ると路上駐車の現状がよくわかる。

ここがゴールだと言われても満足ですよ、僕は。

再び山道を歩き、

休憩できるスポットに到着。

だいぶ歩いたなーと思っていたが、な、700m?

山道の距離は平地で感じるものと大きく違うのだと体感。

目の前にゲーム世代にはお馴染みの体力ゲージが見えてきた。

登山開始後約800mでこんな感じ。

山道をよじ登り。

沓掛山(くつかけやま)山頂。

絶景を撮影しに来ていた人に声をかけ、モデルになってもらう。

ゲージはそろそろまずいレベルだが、目指す久住山山頂はまだまだ先(笑)。

登山初心者には久住山でも険しく感じられ、どんどん体力が削られていく。

弱った心と体に、絶景の癒しという回復が入り、消耗→絶景→消耗→絶景の繰り返し。

ようやく休憩スポット。

仲の良い家族連れに声を掛けパシャリ。

こんな小さい子でもニコニコ登っているのに俺ってやつは…。

避難小屋、

久住分れを通過し、

最後のアタック。

山は登らないのに登山の番組などをよく観る筆者。

登山において最後が大事なのだと、首から上ではわかっているつもりだ。

ついに体力が尽き、すぐそこに見える頂上を前に座り込み、日ごろの不摂生を悔やむ。

「俺のことはいいから先に行ってくれ」と、どこかで聞いたことのあるセリフを語りつつ、仲間たちを見送る。目の前を年配の方や小さい子どもがスイスイ歩いていく。

山は人生に例えられることが多い。

「登る山がなければ、人生はただの谷間である」- ナポレオン・ボナパルト

「山頂に立ったことがない人生は、未だ登っていない山がある」- チャールズ・ブコウスキー

「登るべきは山だけではなく、自分自身でもある」- エドモンド・ヒラリー

特にヒラリーの言葉が今の自分には痛い。

休んでいると少し回復してきた。

そして、同時に重大な事実に気付く。

山頂で食べようと準備していた食料は、すべて自分のリュックの中に…。

同行のスタッフはもちろん、子どもを悲しませることだけはしちゃいけない。

登る。

必ず!

斜面を美しくない姿でよじ登り、

15分遅れで頂上に到着。

昼食を無事配達できた安心感と、筋肉と腰の痛みを乗り越えてたどり着いた達成感に包まれ、登山初心者の自分にとっては、この久住山でもテレビで観たマッキンリー登頂に成功した人たちと同じくらい嬉しかった。

撮影許可を取りながらたくさんの人にインタビュー。

みんないい顔をしている。

昼食の準備をしながらさらにインタビュー。

山口県からの登山客。職場の同僚での登山らしいが、インターネットで「くじゅうラウンドバス」の存在を知り、今日も乗ってきたのだそう。やはり登山者には嬉しいサービスらしく、今後も続けて欲しいという声を聞くことができた。

山頂で飛び跳ねるように元気いっぱいだった関西からの観光客に声をかけた。

聞けばみんな60歳くらいなのだそう…(見えない)。

この中の数名は高山植物を目当てに日本100名山を全部登る旅していて、もう60以上の山を登っているのだそう。それにしても、関西の方は、カメラを向けると最高のリアクションをしてくれる人が多い。ホンマ、いつも助かります。

下山までが登山。

行きとはコースを変えて下山していると、九重連山のひとつ三俣山から犬が下りてくる。

お話を聞いてみる。

年に何度かお散歩で三俣山にやってくるのだとか。

お散歩で登山…。底知れぬ犬の体力に驚きつつ、記念の写真を撮らせていただいた。

最後に、

くじゅうラウンドバスは、令和5年度までは無料で試験運行していた。

試験運行にも関わらず、今回写真で紹介していない登山客の中でも認知度が高く、今後についても多くの期待の声が寄せられた。

令和6年度も春・秋に運行予定。県のホームページをチェック。

登山時における路上駐車問題は、観光客と地元の人、ツーリズムとマナーとルール、観光においてはなかなか相容れないひとつの事象だ。バスの車窓からも多くの路上駐車が見て取れた。地域に迷惑をかけてまで自分の楽しみを優先することは、地域生活を利便性だけではなく安全性の面からも歓迎されるものではない。素晴らしい登山という楽しみを今後も持続できるよう、一人ひとりが広い視野で考えて行動しなければならない。

何より、自分はもっと身体を鍛えないとなー。