トップ > 記事
:2024/07/12 :2024/07/09

外来生物って知っていますか?

池の水を抜く番組やヒアリ、アライグマの被害を伝えるニュースなどで聞いたことがある言葉だと思います。さまざまな情報から、外来生物=悪というイメージを持ちがちですが、なぜ悪く言われてしまうのか、対処、対策を行う上でも、正しく知ることはとても重要です。

今回は外来生物とそれに対する取り組みのお話。

©九重ふるさと自然学校:オオハンゴウソウ写真素材

単に外来生物と言っても、地域に生息していなかった生物全般を指す言葉のため、その対象は広く、外来生物が日本にいること自体が問題というわけではありません。

外来生物の中で問題となっているものは、特定外来生物という括りのものです。
 

ここからは外来生物と特定外来生物についてちょっと説明。

©九重の自然を守る会:オオハンゴウソウ写真素材

外来生物は、もともとその地域にいなかったのに、人間の活動によって海外から入ってきた生物のことを指します。日本の野外に生息する外国起源の生物は分かっているだけで約2,000種(…多すぎない?)。

そのなかには、農作物や家畜、ペットのように、私たちの生活に欠かせない生物もたくさんいます。一方で、在来生物を減少させるなど、その地域の生物多様性に悪影響を及ぼしかねない生き物もいます。
環境省では、特に影響の大きい動植物を外来生物法に基づく「特定外来生物」に指定し、その防除を図っています。特定外来生物に指定されると、飼養、運搬、売買等の一切が禁止され、誰もが防除できることになります。ただし、鳥及び獣に関しては、鳥獣保護法により捕獲等が禁止されているため、防除計画を策定し、環境省の確認を受ければ外来生物法に基づく捕獲が可能になります。外来生物は、必ずしもそれ自体恐ろしい生物ではありません。
もともとの生息域ではごく普通に生活していたのに、人の活動によって他の地域に持ち込まれたせいで、悪影響を及ぼすようになったものがほとんどです。拡がってしまった外来種を防除するには、たくさんの労力がかかります。私たちは、外来種を「入れない、捨てない、拡げない」の三原則を守る必要があるのです。

大分県自然保護推進室チラシPDFデータより
https://www.pref.oita.jp/uploaded/life/272068_1420045_misc.pdf

生物にとって、天敵がいないことや環境が合っていることは、その種を増やす大切な要素です。特定外来生物に指定されている生物は「日本の環境が合った」という偶然も伴っています。

ちなみに、日本の生物が海外に渡って大繁殖をしてしまった事例もあり、ススキがアメリカで、タヌキがロシアやヨーロッパで、ワカメが世界の海で、日本では絶滅危惧種のクロヨシノボリが世界で大繁殖する事例も発生しています。

動物や虫などについては、テレビやニュースで紹介されることも多いため、特定外来生物の種類を知っている人もいるとは思いますが、植物についてはどうでしょう?
大分県内では、オオキンケイギク、オオハンゴウソウ、ブラジルチドメグサ、アレチウリ、オオブサモ、ボタンウキグサなどが確認され、その対策を行っています。

5月11日に、当ホームページでも紹介している「九重ふるさと自然学校」でオオハンゴウソウの駆除活動を行うということだったので、実際に見て触れてみようと参加してみることにしました。

10時15分スタートでしたが、例によって張り切り過ぎて8時30分頃に到着。

もう準備を行っている。

忙しい中、一般財団法人セブン-イレブン記念財団九重ふるさと自然学校代表の川野さんにちょっとだけお話を聞かせていただいた。

2003年セブン-イレブン記念財団10周年をきっかけに、日本の貴重な自然や生態系の保護・保全活動に取り組むことを目的にスタートさせた“自然学校プロジェクト”が形となり、2007年に開校した施設。同様の施設は東京の高尾山とここだけにしかないのだとか。
自然と向き合い、楽しみ、体感できる様々な自然・里山体験を実施しているが、くじゅうの自然環境や生態系の保護・保全活動を熱心に行っている。

今年は今回の駆除活動に加え、防火帯整備や野焼きなどの活動を行う予定とのこと。

今回の参加者はなんと126人。内訳は九重ふるさと自然学校、セブン-イレブン記念財団、各店舗のオーナーさんとその家族、地域の人、そして一般の参加者。人数と規模からこの活動への熱心さが伝わってくる。

ちなみにセブンイレブン店頭の募金箱のお金もこのような活動の運営資金に充てられているのだとか。
これからはちょっと見る目が変わりそう。

▲令和のチェッカーズ
▲頭にトンボが…。活動を通してトンボのブローチも流行らせたいのだとか

地域の自然保護活動を行う人たちの中には、別の取材でお話を聞かせていただいたお顔もチラホラ。何も変わらないように見える素晴らしい景色は、この人たちの影の努力があることを忘れてはいけない。

▲今日一日の動きをレクチャー

開会式

まずはご挨拶とレクチャー。
オオハンゴンソウは北アメリカ原産。明治時代に観賞用として導入されたが、日本中に繁殖してしまった。草丈は50cm~3mに及ぶが、鮮やかで優しい黄色の花弁はとても可愛らしく、それも人の手による繁殖を促進してしまったのかもしれない。
オオハンゴンソウはこの地域が繁殖に適しているのに加え、生命力が高く、たった2g地中に根が残るだけで再生するらしい。

駆除方法は以下のとおり。

種ができる前の季節に根っこからまるごと抜き取り、天日に当てて枯らし、ビニール袋などに密封して可燃ごみに出すのが特定外来植物の処分方法だが、生きたままの運搬や野外への放出などが禁止されているため(罰則もあります)、各自その処分方法をインターネットなどできちんと確認して行ってください。

そして準備運動。

出発!

これだけの人数が揃えばかなりの量を駆除できるのではないかと期待しつつ、今回の駆除場所へ移動。

到着して早速作業を開始する。

ん?

んん?

これは?

なかなか?

思っていた寄りも根が深く、強く、地中を複雑に走り回っている。手強すぎるでしょ…。

植物の生命力はやはりものすごい。

汗だくになりながら。

採って。

詰めて。

今回は九重町の協力で、ここまで回収しにきてもらうためそのまま袋に。

集める。

九重の自然を守る会の人にお話をお伺いしてみました。

「生まれた頃から咲いている花で、最近までこれが外来生物なんて知らなかった。昔は盆花として当たり前に日常に入っていたものだったからちょっと複雑。ただ、深く強く根を張ることで、在来のヒメユリなどの植物がどんどん少なくなっているからなんとかしないといけないね」とのこと。

途中、お子さまが集まってネイチャーゲーム。

自然の中で楽しそう。


なんとか活動終了。

へとへとだけど充実感がある。

かなりの量を駆除したけれども、繁殖している量に比べたらまだまだごく一部。
毎年行い続けることで、だんだんと量を減らしていっているそうです。

気が遠くなるくらいの努力だけれど、こういった活動があるからこそ、繁殖が抑えられている部分もあるのだと思いました。もっと大人数で一斉に駆除活動を行えば早いのかもしれないが、現実的にそれは難しい。
せめて活動をしない人に、“広げない協力”をしてもらうために、特定外来植物についてもっと知ってもらうべきだと思いました。

閉会式。

頑張った子どもたちに表彰式。

夏が来て、オオハンゴウソウが咲くころにまた訪れて、どれくらいの花が咲いてしまっているのかを、自分の目で確認したいと思います。

最後に。

一生懸命生きている植物そのものには罪はありません。知らずに愛でていた先人にももちろん罪はありません。考えないといけないのは知らなかったこととそれを多くの人に知ってもらうためにお知らせすること。

特定外来生物について詳しくはこちらをご覧ください。

大分県自然保護推進室特定外来生物啓発チラシ
https://www.pref.oita.jp/uploaded/life/272068_1420045_misc.pdf

九重ふるさと自然学校についてはこちらから

一般財団法人セブン-イレブン記念財団ホームページ
https://www.7midori.org/