くじゅうネイチャーガイドクラブ【前編】 - 自然保護の取り組み –

アウトドア体験フェスでお会いした「くじゅうネイチャーガイドクラブ」さん。
イベント時のブースは大賑わいで、登山の方法や装備などについて忙しそうにレクチャーをしていたので、あまり話をお伺いできず…。イベント後に調べてみると、エコツーリズム、自然保護活動、地域の活性化のための活動など、地域に根差した幅広い活動を行っていることを知った。
野山における企業やボランティアの取り組みなどは別の記事で取り上げたことがあるが、観光を軸とした活動はあまり取り上げて来なかったので、面白い話が聞けるのではないかと思い、取材させていただいた。

応対してくれたのは代表理事の増田さん。ピシッと背筋が伸びたダンディな山男だ。
まずは、くじゅうネイチャーガイドクラブは何をしているのか、そしてどうしてこの団体を立ち上げたのか、現在に至る経緯を聞かせてもらった。
くじゅうネイチャーガイドクラブは、くじゅうにやってきた人や地域住民とともに、九重のかけがえない自然や、生物多様性の恩恵と保全の大切さに気づいてもらい、守るために行動する人を増やせるツアーを企画・実行しつつ、地域の歴史・文化との交流を行い、持続的な保全活動の支えとなるような活動を目指すエコツーリズムを基軸としたNPO法人(特定非営利活動法人)。
※エコツーリズムの定義は日本エコツーリズムセンターが提唱する定義に沿って紹介

増田さん自身は福島県出身、東京でシステムエンジニアをしていたが、その頃から山登りなどを通じて自然の魅力に惹かれていた。奥さんも自然が大好きで、いつか自然の近くで暮らしたいという二人の思いがかない、奥さんの故郷福岡から近い九重町に移住してきたのだとか。当時、教育現場でのIT導入が進んでいる最中だったので、本業のシステムエンジニアの業務を行いながら移住生活のスタートとなった。
本業の傍ら、大好きな自然での取り組みがもう一つの仕事になった。
くじゅうの美しさや楽しさを多くの人に伝えるために、宿泊施設からの依頼でガイド業務を行っていたが、世の中の趣向の変化に伴い需要が大きくなり、旅行エージェントからの依頼も増えてきて、周囲に求められる形で規模が大きくなってきた。活動を始めた2005頃は3~4人で活動していたが徐々に人数を増やし、2016年にNPOに。今では登録ガイドは20名を数える規模になった。ガイドの中には、度々九重を訪れるにつれ、九重に魅了され、ここでガイドをするために資格を取った人もいるらしい。
九重町にやって来た時に驚かされたのが、九重町に住む人たちが自分たちで自然を守って行く意識の高さだったのだとか。
増田さんたちも、「くじゅうネイチャーガイドクラブ」の活動として、自然保護や環境整備の活動を行っているが、時代や状況が変わればそれに伴う“困り事”も発生する。
くじゅうだけの話ではないが、昔はゴミやタバコのポイ捨てなどが多く、清掃活動に手を取られることが多かった。今はその量は減ってきたのだが、近年のアウトドア人気が高まるにつれ、今度はオーバーツーリズムやマナー軽視、またはそもそもマナーを理解していない人が目立つようになった。くじゅうの自然を楽しみにたくさんの人が来てくれることはありがたいが、やってはいけないことはある。

世界を見渡しても九州にしか分布していないミヤマキリシマ(大分県で準絶滅危惧種)を例にすると、大分県ではそのほとんどがこの地域にあり、春に咲き誇るピンク色の花を見るために、日本中、そして世界中から旅行客がやって来る。少しでも良い写真を撮ろうと、他の植物を踏みつけてしまう人、花を持ち帰ろうとする人、中には枝を折ろうとする人までいる。そして、多くの人が同じ場所に殺到することで登山道が荒れてしまう。
自分が楽しければ…、良い写真が撮れれば…、というその時だけの浅い目的だけではなく、来る前に「なぜそこにその花が咲いているのか」「なぜずっとその花や景色が守られているのか」といった、“そのものの背景”を知ってもらえれば、意識が変わるかもしれませんと、増田さん。
エコツーリズムを語る上で、自然環境を守ることはとても重要なこと。くじゅうネイチャーガイドクラブでは、熱心な自然保護活動を行っている。その活動を支えるのが、ガイドはもちろん、今では200人以上に増えたサポートスタッフの人たち。最近では、自然保護意識の高まりから近県からの参加も増えた。
サポートスタッフの具体的な活動内容としては
・くじゅう連山の登山道整備(補修、草刈り・枝打ちなど)
・長者原及び牧ノ戸峠エリア他の自然環境保全及び美化活動
・坊ガツル・タデ原湿原における野焼き準備作業となる輪地切り及び輪地焼き作業
・道標・ロープ柵整備などの遭難防止対策
・その他遭難防止対策および災害復旧に関わる作業 など。
サポートスタッフはボランティア参加だが、自然好きな人たちにとって、非日常を味わう楽しみの要素も大きく、毎回多くの参加者を集めている。
くじゅうネイチャーガイドクラブでは常時参加者を募集している。
参加要項
・普段から登山をされている健康で協調性のある方(18歳以上)
・長者原まで車で移動できる方(同行できる方)
・電子メールでのやり取りができる方(要返信)
・定期的に作業に参加できる方(2年内に最低1回)
・参加費用は500円/回。※活動中の保険及び諸経費に充当
興味がある人はホームページでご確認を。
くじゅうネイチャーガイドクラブホームページ(NCサポートスタッフ申込要項)
https://kuju-ngc.com/ncsp/
素晴らしい野山の光景は、田舎に行けば必ず見ることができるというわけではない。変わらない自然の裏側には、変わらないように愛情深い努力をしている人たちがいることを忘れてはいけない。今ある当たり前を未来につなげるために、できることから始めてみることはとても大切。
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