【自然観察指導員と森と遊ぶ会の活動】

伊東博光さんと、その奥さんの伊東都茂子さん。
夫婦2人で自然観察指導員として、日々、自然と人をつなげる活動を行っている。
博光さんはいつもイベントに同行してくれていて、日本自然保護協会自然観察指導員、プロジェクトワイルドエディケーター、PLTリーダー、大分県自然公園指導員、大分県認定グリーンインストラクターの肩書を持ち、豊富な知識と経験でもちろん頼りになる存在なのだが、何よりも彼の魅力は、強面のフォルムで人懐っこく笑う顔と、おやじギャグを交えた軽妙な解説。そして参加者と一緒に心から自然での遊びを楽しむ姿にある。
そんな博光さんをして、凄い人と呼ぶ奥さんは、日本自然保護協会自然観察指導員、プロジェクトワイルドエディケーター、PLTリーダー、森林セラピーガイド、大分県自然公園指導員、大分県認定グリーンインストラクターという肩書を持ちつつ、森と遊ぶ会という自然観察会を主宰している。
2人の活動を語る上で、まずは「森と遊ぶ会」というに自然観察会ついて語らないといけない。

獣医を生業としていた堤賢三さんが創設した森と遊ぶ会は、親と子の自然観察会。日本自然保護協会の会員を中心に活動し、大分の自然の楽しさと大切さを子ども達に伝えたいというただ一念で運営されている。
始まったのは40年以上前。大量生産、大量消費、ゴミのポイ捨ても目立つ、まだ自然保護に対する意識がそれほど高くない時代。子どもたちの関心の中心が登場したばかりのテレビゲームだった頃に、このような活動を行っている会はそんなに多くはなかった。毎月1回、主に大分市内の森や野原、川などで遊び、自然観察会を行っていた。



子どもたちを集め、東稙田探検隊を結成し、活動報告を行うなど、子どもたちに地域の自然の尊さや素晴らしさを考えてもらう活動をしていた。
2人が森と遊ぶ会と出会ったのは、子育ての最中。
博光さんは、竹田市荻生まれで、広大な自然の中で遊ぶことを熟知した、言葉をあてがうなら“自然遊びネイティヴ”。
対して、都茂子さんは東京生まれ。小学生の時に長崎県対馬に転居し、あまりの環境の違いに驚くやらショックやら…だったとのこと。宮沢賢治が大好きで、物語の力を栄養にして子どもたちを育む活動を行うをコンセプトとした「ものがたり文化の会」での活動を行っていた都茂子さんは、都会から田舎への転居経験などもバックグラウンドに、子どもたちに自然の素晴らしさも伝えたいと思い、活動に参加した。
2人(特に都茂子さん)は、堤さんから、経験を通じて学んだ多くのことを教えてもらいつつともに活動し、堤さん亡き後も会を存続させるべく、活動を続けている。

会が大切にしていることは大きく3つある。
・「森と遊ぶ」とあるように、人間を主役とせず、森の植物や生き物たちとの出会いを楽しむこと
・子どもが自然と遊び、森と友だちになっていく中で、生きるための知恵やルールを身につけてもらうこと
・イベントは引き出しを多く持って何にでも対応し、押しつけや否定をしないこと
保育士・幼稚園教諭の資格を持つ都茂子さんは、いつでも子どもに一生懸命だ。

保育士・幼稚園教諭目線で見ても、幼児から自然体験を行うことで、多くのメリットがあるのだと語る。
・筋肉が付き活動的になる、免疫力が高くなることが期待できるなど、身体的なメリットがあること
・五感が鍛えられるなど、脳科学的メリットがあること
・自己肯定感を高めることで、積極的な人格形成ができること
※国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する意識調査(令和元年度調査)」
・協調性を醸成しやすいこと
・責任感のある人格づくりの基盤づくりができること
など。

子どもたちだけではなく、今では、手話サークル会員になり、ネイチャーゲームを聴力障がい者と健聴者みんなで楽しめる機会を作ったり、福祉施設に行ったりと、少しずつ活動の幅を広げている。「障がいの有る無しに関わらずみんなで自然の楽しさを分かち合っていきたい」と語るのは博光さん。
2人は、自然について講釈を垂れたり、考え方を押し付けたりはしない。そこで何を見て何を感じてどう思うかはイベントに参加した人の解釈に任せる。感覚は様々、考え方は人それぞれ。ただ魅力を話し、見どころを伝え、遊び方をお知らせする。

自然をもっと好きになってもらい、自然のファンを増やし、それぞれの自発的な自然保護意識を引き出せればいいと考えているだけなのだ。そこには自然保護に関しての強制や強要はなく、まるで柿の木を植えて実りを迎えるまでを楽しみながら待つように、遠回りでも確実な成果を求めている。
なんでもない自然も、興味を持って見やると、そこは何でもある自然。
トンボを捕まえたり、フカフカの落ち葉で遊んだり、里山を歩いたり、草花を観察したり、川の生き物を探したり、草笛を吹いたり。なんとなくやらなくなったそれらのことを、ちょっとやってみるだけで、なんだかワクワクする。自然でそういった遊びをしたことがない子ども達のワクワクは、そんなレベルではないだろう。
色んなイベントで伊東さんと遊ぶ子どもたちの姿を見てきて、みんなとても楽しそうだったことを思い出す。

伊東さん夫妻の活動は、自然と人をつなぎ、子どもと同じ目線で遊びながら、今を未来に伝えている。
イベント参加者の中から、未来とその先の未来をつなぐ人がたくさん出てくることを期待しながら自然保護なんて言葉が必要ないくらい、自然を慈しむ人で溢れる時代が来ることを願って。
森と遊ぶ会フェイスブックページ
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