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:2025/03/29 :2025/03/29

せっかく行くなら姫島盆踊りかアサギマダラの時期にと思い、姫島車えび祭の週は予定が合わず…、翌週のアサギマダラをお目当てに、楽しみいっぱいで取材日を迎える。

が、

雨…。

というよりも大雨…。

アサギマダラも厳しいかなと思いながら、まずはアサギマダラの休息地を目指し、観音崎、拍子水、姫島灯台、地層の大海のコンボリュートラミナ、姫島庄屋古庄家を回ることに。道中に散らばる地層姫島七不思議を楽しみながら、というプラン。

アサギマダラ休息地

アサギマダラは渡り蝶。5月頃、姫島のスナビキソウの蜜を求めて、南の地から飛来し、姫島で休息したのち、涼しい北の地に向かって飛び立つ。10月頃、その世代を交代した蝶が、北から南へと向かう途中で、姫島に生えているフジバカマの花の蜜を求めて休息するという。
北は本州・北海道、南は台湾までを移動範囲とし、驚くのが世代も変わっているのに、なぜ同じ場所に飛来するのかという神秘的な蝶。

訪れたのは秋の見ごろ…のはずが、最近の温かさと雨で蝶も予定が狂ったのだろう。出会えず断念。

観音崎

姫島の黒曜石産地で、島内随一の景勝地である観音崎は、乳灰色~乳白色の黒曜石の断崖が続いている。観音崎の黒曜石は、火山活動の過程を記録した岩石で、地質学的に重要であるとともに、主に縄文時代には石器に加工され、瀬戸内海を中心に広い範囲で流通しており、考古学的にも大変重要であることから、平成19年に「姫島の黒曜石産地」として観音崎一帯が国の天然記念物に指定された。

本来は絶景が広がるはずだったのだが…、しかしこれはこれで楽しい。

続いて観光地で、島の北東部で湧き続けている拍子水へ。

拍子水

ここは姫島七不思議のひとつらしい。お姫様がおはぐろを付けた口をゆすごうとしたが水がなく、手拍子を打って祈ったら水が湧出したことからそう呼ばれているのだそう。飲用でもあり、効能が高そうようなのでちょっと飲んでみる。なるほど…という味(笑)。

姫島灯台

明治37年に島の東端の断崖の上に建てられた灯台。花崗岩造の堅固なもので、その後電化され、今では無人になったが、現役で海を渡る人の安全を見守っているのだとか。天気が良い日にはここからは瀬戸内海を一望できる。

灯台の手前の展示室では、過去の灯台についての情報が展示されている。なんとも趣がある。

案内のお姉さま方と談笑をしながら、楽しいひと時を過ごす。前の週の姫島車えび祭は島に人が溢れるほどの大盛況だったとのことで、やはり先週だったかと思いながら、静かで緩やかなこの日もそれはそれで楽しい。

続いて地層の大海のコンボリュートラミナへ。

大海のコンボリュートラミナ

地震等の揺れが加わったことにより地層が流動化し、層が乱されて形成される構造をこう呼ぶが、正直馴染みがない。ただ、行く前に調べてどうしても見たかった。約60万年前の火山灰で作られたこの地層は、地球規模の海水準変動の影響を受け、淡水環境と海水環境が繰り返されていた証しなのだとか。

今生きている人生も、ちょっとした困りごとも、地球の歴史からみると、どうでも良いくらい小さいことなんだなと想いを巡らせる。

続いて、60万年ほどの昔ではないが、江戸時代を通して姫島の庄屋を務めた姫島庄屋古庄家へ。

姫島庄屋古庄家

庄家は、塩田の造成、サツマイモ栽培の導入、「沖の波止」の築造など、島民の生活を豊かにする善政を行った島の名家。1864年の下関戦争の際には、後の初代内閣総理大臣となる伊藤博文や、外務大臣となる井上馨など、歴史上有名な人物が来島し、ここを訪れているのだとか。今は建物の中に入ることもでき、当時の面影を伝える役割を持つ。

小腹が空いたので地元のパン屋さんにお邪魔した。

h.ベーカリー

島にたった1軒のパン屋さんで、しかも急な訪問。着いた時にはもうほぼパンがない…。少しだけ残っているパンを購入し、地元の人も「いつも食べているから分けてあげるよ」と声をかけてくれた。島の人はとても暖かい。長年趣味でパンを作ってきた店主の濱田さんのここは、地元の人たちが集まる人気の店。学校給食用のパンも製造しているため、島の子どもはほとんどみんな濱田さんのパンの味を知っている。

他にも、車えび、レンタサイクル、ジオクルーズ、温泉、多くの火山など、見どころはたくさん。キツネ踊りで有名な姫島盆踊りもいつか見てみたい。

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地質や地形などの地球活動の記録(地質遺産)を保全し、その土地のなりたちやそれらと生態系、人の暮らしの関わりを学び楽しむことを通じて、地質遺産を教育研究活動や観光、ツーリズムなどに有効に活用し、地域を活性化していく取組み。

博物館で見聞きするようなものが島のそこら中にあり、中には地球の息吹を伝える自然までもが地元の人の生活圏に多く点在する。これほどまでに過去と現代の日常が絡まるように存在する場所は、日本広しとは言えど、そう多くはないだろう。島では水産業の更なる発展、「姫島ITアイランド構想」に基づくIT企業や姫島の特性にあった企業の誘致、近隣の自治体と連携した広域観光ルートの創出による観光振興など、未来へ向けたアクションも進めている。

姫島は小さな島に溢れんばかりの魅力が詰まっている。とても1日では魅力を伝えきれない。楽しみ方の切り口が多いので、島に行くと自分なりの楽しみ方が見つけられるはず。機会を作って行ってみることをおすすめしたい。