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:2025/09/24 :2025/10/21

 奥豊後と呼ばれる豊後大野市。自然と素朴な文化が息づく場所であると同時に、近年は“サウナのまち”として注目を集める。山あいの清流、季節によって表情を変える山々、澄み切った空気─。そんな自然と一体化できる体験が待っている。歴史と癒やしを一緒に楽しめるのが、このまちならではの魅力だ。
最初の目的地は清川町の御嶽(おんだけ)神社。国の重要無形民俗文化財「御嶽神楽」の発祥地として知られる由緒ある社だ。国道沿いの「道の駅きよかわ」から車で20分ほど、緑に包まれた山道を進むと鳥居が現れる。そこから社殿まで359段の石段を登り切ると、心地よい達成感に包まれる。

社殿裏からさらに伸びる山道はご神体とも言われる岩場「仙の嶽」に続く。標高568メートルの山頂はすぐそこ。祖母・傾、阿蘇、くじゅうの山々、遠くに別府湾まで見渡せる大パノラマが広がる。ここが太古の海底でできた地層が隆起した場所というのには驚いた。

自然と歴史を満喫した後は、このまちならではの「ととのう」体験へ。市は2021年に「サウナのまち宣言」を掲げ、アウトドアサウナの聖地として人気を集める。温泉はないものの、古くから岩壁に掘った穴を利用した石風呂文化があり、セキショウの葉を敷いて入る蒸し風呂を利用してきた。その伝統が現代的に進化し、自然と一体となるサウナ体験として息づいている。
今回訪れた奥岳川沿いの宿泊施設「里の旅リゾート ロッジきよかわ」には、誕生したばかりの「なばサウナ」がある。特産のシイタケを意味する方言「なば」を冠した建物は愛らしいキノコ型だが、中は本格的なフィンランド式。シイタケ栽培にも使うクヌギの薪で80~90度に温められ、じっくり汗を流せる。まるで旅の疲れが溶けていくようだ。

刺激を求めるなら、川辺に設けられたテントサウナがおすすめだ。テント内は最高120度まで上昇し、全身が熱気に包まれる。「もう限界」と思った瞬間、目の前を流れる奥岳川へ飛び込めば、爽快そのもの。川辺での外気浴は鮮やかな緑と澄んだ空気が心まで洗ってくれるようで、「ととのう」という感覚を全身で味わえる。「外気や水温との温度差が大きい秋から冬場の爽快感は格別ですよ」と同施設の江副雄貴さん。凛とした空気、澄んだ夜空。これからの季節も心地よさを体感できれそうだ。

川沿いの施設には木の形をした宿泊用のツリーハウスが並び、自然に溶け込むユニークな空間。地元食材を生かした料理や川釣りなど、サウナ以外の楽しみも多い。さらに足を伸ばせば「九州オルレ奥豊後コース」でのウォーキングも楽しめる。
市内に点在するサウナはどれも個性豊かで、巡れば巡るほど新しい出合いがある。汗を流し、水に飛び込み、自然と一体になる。そんな体験の締めくくりに味わう「サウナ飯」もまた楽しみのひとつだ。ここでしか味わえない時間が、心と体をリフレッシュしてくれた。

【メモ】大分市から豊後大野市まで車で約1時間。市内には原尻の滝、稲積水中鍾乳洞、沈堕の滝などの観光スポットがある。サウナに関する問い合わせは里の旅リゾートロッジきよかわ(TEL:0978-35-3601)まで。
※御嶽神社から仙の嶽までの道のりは森の中や岩場を通るため、安全に気を付けて楽しんでください