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:2025/12/26 :2025/12/26

 臼杵市には国宝の臼杵石仏にとどまらず、神社仏閣やキリシタンに関する史跡が数多く残る。臼杵市観光協会の「うすき祈りの回廊」は、そんな市内の「巡礼地」33カ所を巡るスタンプラリー。先人たちが大切にしてきた祈りや思いに心を寄せ、様々な魅力に触れることができる。2026年4月からは、同市野津町の4カ所が「番外編」として新たに加わる。番外編を含む野津町の巡礼地を訪ねた。

 うすき祈りの回廊のガイド、古谷美和さんが案内してくれた。まずは野津町泊の白山(はくさん)神社。国指定天然記念物の風連鍾乳洞を過ぎ、山道を3キロほど進むと、深い森に抱かれるように存在する。平安時代末期から鎌倉時代にかけて建てられたそうで、神仏習合の姿を今に伝えている。急な石段を登り切ると、ガラスの目を持つ狛犬が出迎える。「狛犬は職人さんの個性が出るから、見比べると面白いですよ」と古谷さん。縁結びの神様(菊理比売神・くくりひめのかみ)だそうで、しっかりお参りした後、スタンプ手帳に押した。

 社殿奥にある深く、大きな洞窟も見どころ。整備された石段を慎重に下り、ハンドライトを岩肌に向けると、幻想的な空間が広がり、まるで異世界に来たよう。洞窟内にいたるところにまつられた石仏などの石造物は、社殿と共に市有形文化財に指定されている。最深部には石仏群があり、中央には本持仏の十一面観音菩薩が鎮座する。頭部に11の顔を持ち、人々をあらゆる方向から見守ってくれるといわれる。前に座って目を閉じると、自然と少しずつ心が静まっていくのを実感できた。

 続いて向かったのは、野津町王子の溜水(たまりみず)熊野神社。溜水公民館駐車場に車を止め、歩いて5分ほど。田園に向かって道なりに歩くと、左手に三連の鳥居が現れる。鳥居をくぐり、社殿に近づくにつれ、木々が深く生い茂る。

 社殿に続く石段や狛犬は苔に覆われ、境内は神秘的な雰囲気に包まれている。御神木のスギの木は樹齢900年とも伝えられ、圧倒的な存在感を放っていた。古谷さんに「ぜひ触れてみて」と勧められ、両手を広げて幹に触れると、大きなパワーをもらえた気がした。

 旅の締めくくりは、溜水熊野神社近くの「金明孟宗竹(きんめいもうそうちく)」の竹林。孟宗竹が突然変異したとみられ、緑色と黄色の節が交互に入る希少な竹が群生している。竹林をゆっくり歩いて、その美しさを味わう。風が通り抜け、竹林がさわさわと鳴っていた。一本一本が日光を受けてきらめき、まるで、自然が織りなす祈りの空間のよう。

 うすき祈りの回廊は、信仰や宗派に関係なく、自分と向き合う時間を与えてくれた。古来より多様な文化を受け入れてきた臼杵。さまざまな祈りが交わる地で、心を解き放つ旅に出かけてみませんか。

【メモ】
巡礼地は市内に33カ所ある。コースは▽臼杵八坂神社や大橋寺など城下町周辺の「紅(あか)の回廊」▽樹林寺、福聚寺(ふくじゅうじ)など海辺を行く「青の回廊」▽下藤キリシタン墓地や普現寺など野津町の聖地が中心の「緑の回廊」▽臼杵石仏や満月寺などを回る「彩の回廊」―の四つ。番外編として加わるのは、白山神社※、熊野社・長谷神社、日吉神社・猿権現、一ツ木キリシタン地下礼拝堂の4カ所。ガイドブックやスタンプ手帳は、臼杵市観光交流プラザで無料配布している。問い合わせは臼杵市観光協会(TEL0972-64-7130)
※白山神社の洞窟を訪れる際は、洞窟内が暗いため懐中電灯を持参し、手袋や運動靴を着用するなど、安全に十分ご注意のうえお立ち寄りください