知っておきたい、山に潜む危険 〜山で遭遇するかもしれない、「もしも」に備えよう!〜
高山でも低山でも、ひとたび山に入ればそこは全くの自然の中。動物との遭遇や悪天候、自然災害など予期せぬ危険がたくさん潜んでいます。しかし、どんな危険があるのか知っておくだけで心構えは変わってきます。ここでは、登山で遭遇する可能性のある危険を紹介します。
野生動物や害虫との遭遇
●スズメバチに注意
スズメバチは5月頃から活動を始め、秋に最も活動的になります。危険を感じると巣の 周囲を飛び回り、さらにアゴをカチカチと鳴らして威嚇します。飛んでいる姿を見つけたら、速やかに静かにその場を離れましょう。黒い色に反応するため、山では帽子を被り、明るいウエアを着用しましょう。また、香水の匂いにも反応するため、登山時の使用は避けましょう。
●イノシシに注意
山中で、土が掘り返されている場所を見つけたら、それはイノシシが餌を探した跡。土が湿っていたらまだ近くにいる可能性があります。鈴やホイッスルを鳴らしてこちらの存在を伝えましょう。イノシシの子どもが登山道や林道に飛び出してくることもあります。子どもの側には必ず母親がいます。そんな時のイノシシは特に警戒心が強く凶暴です。決して近づかないようにしましょう。またオスには大きな牙があり、死亡事故も起きています。
●マダニに注意
春から秋にかけてはマダニの活動が活発になります。中には感染症のウィルスを保有しているものもいて、刺されると発熱や下痢、嘔吐だけでなく、重症化すると死に至る場合も。山に入る際は、長袖長ズボンを着用しなるべく肌を露出しないようにしましょう。もし刺された場合、無理に取ろうとすると、マダニの口先が皮膚の中に残り化膿してしまうことがあります。速やかに医療機関を受診しましょう。
歩きながら注意したいこと
●木を無闇につかむことの危険
上りや下りで、ちょうどいい場所にある木の枝や根っこを手すりのようにつかんでしまうことはよくあります。しかし、それらが腐っていたり折れかけていたりした場合、転倒や滑落につながります。やむなくつかむ場合はその状態をよく確認しましょう。そして「三点支持」 の原則を意識しながら、慎重に進みましょう。
=>「山の歩き方入門編 ~歩き方ひとつで、登山は楽に安全に!~」の記事で紹介しています。
●落石の危険
ガレ場(石がたくさん落ちている登山道)を歩く際は、落石を起こさないようにしましょう。勢いをつけて斜面を落ちる石は、小さくても後続の登山者にとっては凶器となります。グラグラする浮石に足を乗せたり、蹴り出すように足を運んだりすると、落石を起こす可能性があります。足を乗せる場所を確認しながら一歩ずつ丁寧に歩きましょう。もし落石を発生させてしまったら、「ラク!(落石の意味)」と大きく声を掛けて、後続の登山者に知らせましょう。
●滑る場所ベスト3は、落ち葉、木道、泥の道!
雨が降った後の登山道は、いつもより滑りやすいため特に注意して歩きましょう。気をつけたいのは粘土質の泥の道。前の人が滑った跡が残っているような場合は、その箇所を避けて足を運びましょう。濡れている落ち葉の上も滑りやすいため、特に下りでは足裏全体で地面を踏むように歩きましょう。
天気予報をこまめにチェックしよう
山に行く予定がある場合は、数日前から天気予報をこまめにチェックしましょう。たとえ当日が晴れの予報でも、前後の天気をチェックしておくことは大切です。雨の後は山が荒れているかもしれません。翌日の予報が荒天の場合、早く崩れ出すかもしれません。天気の動きを見て、快方に向かっているのか、崩れ出しているのかもチェックしておきましょう。
●悪天候の際は潔く中止しましょう。山は逃げません。
せっかく仲間と予定を合わせたからと、悪天候でも登りたくなる気持ちは分かります。しかし、無理をして強行突破しても、怪我をしたり事故にあったりすれば、2度と山に登れなくなるかもしれません。
山は逃げません。荒天の場合は思い切って予定を変更して、山頂を目指さない自然を楽しむ1日にしてみるものおすすめ。傘をさして歩ける公園で自然観察をしたり、植物園に行ったり、家で山道具をメンテナンスしたり、次の山の計画を立ててみたりと、登らずとも次の登山が楽しみになるような過ごし方をしてみては?
●雨が続いた後や、台風後の登山は要注意
たとえ登る当日が晴れ予報だったとしても、台風や長雨後の山には危険がいっぱい。台風後は土砂崩れなどで林道に被害が出ている場合もあります。出発前に登山口までの道路状況を確認しておきましょう。大雨が続いた後は、地盤が緩んでいたり、川を渡るルートは増水して渡れないことも。数日前から天気予報はチェックしておきましょう。
●熱中症に要注意
気温が25度を超えると熱中症の危険が高ま ります。初期症状では足がつる、めまいなどが発生し、その後頭痛、吐き気が起こり、重症になると意識障害が発生することも。こまめに水分を摂り、長袖や帽子で日光を遮るのも効果的です。汗で塩分が失われるため、スポーツドリンクや塩アメなどで塩分を補給しながら登りましょう。
●山で濡れてしまうことの危険
雨が降ってきても雨具を着るのが面倒で、ちょっと濡れるくらいなら平気と、濡れたまま山頂に到着。休憩をとる間に風に吹かれて、体温が急激に下がりあわてて下山ということはよくあります。真夏以外であれば、低体温症の危険も。パラっと来たと思ったら、すぐに雨具を着込みましょう。
なんでもないような場所で事故は起こる
最後に、事故が起こる場所は危険な岩場や鎖場だけではありません。なぜこんなところで?というような場所で発生することも多々あります。会話や写真撮影に夢中になると、たとえ安全な場所でも気の緩みが事故を誘発することもあります。自然の中に入ることは、常に危険と隣り合わせだという緊張感を持って山登りを楽しみましょう。